最近、姿勢を良くする方法として、肩甲骨のストレッチが話題になっていますが、どのようにストレッチすれば良いのか、どのくらい行えば良いのか、気になる方も多いことでしょう。
そこで今回は、肩甲骨のストレッチの方法を紹介していきます。
肩甲骨ってなんだろう?
肩甲骨がどこにあるかご存知ですか?背中にある羽のような部分を指します。
通常、骨と骨が連結する部分を関節と言い、ほとんどの関節は靭帯で強力に制御されています。
例えば膝関節を見てみましょう。膝を目一杯伸ばしてみてください。一直線になるところまでしか膝は伸びませんよね?
これは膝の裏の靭帯がそれ以上伸びないように制御してくれています。このようにほとんどの関節には靭帯が存在し、関節の動きを制御してくれています。
ですが、肩甲骨には関節を制御する靭帯がありません。筋肉が肩甲骨をぶら下げているような形でついています。ですので、肩甲骨は様々な方向に、可動域が大きく動く構造になっています。
では、肩甲骨はどのように動いているかというと、全部で8方向に動く構造となっています。上下に動く挙上ー下制、閉じたり広がったりする内転ー外転、回転する上方回旋ー下方回旋、前後に傾く前傾ー後傾といった動き方となります。
肩甲骨は肩甲骨単体で動くことがありません。肩の運動や背中の運動と連動して動くといった特徴があります。
バンザイするように手を上げたときには、肩甲骨が回転しながら後ろに傾斜し、背中を丸めたときは外側に広がるように連動して動きます。
これらのことを知らずにただ肩甲骨をストレッチするのではなく、肩甲骨の動きの仕組みを理解した上で肩甲骨をストレッチすることで、より効果的なストレッチができるようになるでしょう。
自分の肩甲骨の硬さを確認しよう
肩甲骨の動きが悪いかどうか、中々自分で確認することは難しいですよね?
先程紹介したように、ただでさえ肩甲骨は複雑な動きをしています。どの方法の動きがどれだけ不足しているか、などを確認するのは専門家でなければチェックすることは難しいでしょう。
ですので、ここでは自分で行える簡単なセルフチェックの方法を紹介していきます。
肩甲骨の動き
①挙上②下制③外転④内転⑤上方回旋⑥下方回旋⑦前傾⑧後傾
ばんざい(外転、上方回旋、後傾)
両手を一緒に前から挙げていきます。腕が耳の横まで挙がれば問題ありません。
もし挙がらない場合は、両手同時にではなく、片手だけで挙げていきます。片手で挙がらない場合は、肩甲骨の外転、上方回旋、後傾の可動性が乏しいことが疑われます。
手を広げる(内転)
両手を横に広げて、地面と水平を保ったまま、後ろで両手をつけるように引きます。このとき、両方の肩甲骨が近づくように意識して動かすと良いでしょう。
両腕が後ろに動かせない場合は肩甲骨の内転の可動性が乏しいことが疑われます。
胸の前で両腕つけて挙げる(外転、上方回旋、後傾)
両方の手の平と肘を顔の前でつけます。肘、手のひらをつけたまま、なるべく上に挙げていきます。肘が鼻の辺りまで挙げられれば問題ありません。
挙げられない場合は、外転、上方回旋、後傾の可動域が乏しいことが疑われます。
肩甲骨を後ろで触る(下方回旋)
片側の手を背中に回し、動かしている手と同側の肩甲骨を触れるように動かします。
触れられない場合は、反対側の肩甲骨を触れられるか確認します。
左右の肩の高さ
鏡の前で座位、または立位をとります。一度、肩をすくめるように両肩を耳につけるように持ち上げます。上がるところまで持ち上がったら、力を抜くように肩を落とします。その時の肩の高さの左右差を確認してみてください。
左右差があり、どちらか一方の肩が上がっているようでしたら、上がっている方の肩甲骨の下制が制限されている可能性があります。
左右の肩の突出
自分自身で確認するのが難しいため、他者に協力してもらい確認する方法です。なるべく硬い床に上を向いて寝そべります。
その際、低めの枕を使用することは問題ありません。寝そべった状態を頭側から床と肩の距離を観察してもらい、肩と床との距離の左右差がないか見てもらいます。
肩と床との距離が著しいなどの左右差がある場合は、肩甲骨の内転運動が制限されている可能性があります。
肩甲骨をストレッチするメリットってなんだろう?
肩甲骨とは何か、肩甲骨の硬さをチェックする方法を紹介してきました。ここでは、そもそも肩甲骨をほぐすメリットとは何か、について紹介していきます。
肩甲骨をストレッチするメリットとして、大きく分けて①五十肩などの痛みの予防、②肩こりの予防・改善、③自律神経の調和、の3つが挙げられます。
【肩甲骨をストレッチするメリットってなんだろう?】①五十肩の痛みの予防
冒頭で紹介したようにバンザイしたり手を広げたりする場合は、肩甲骨が連動して動くようになっています。
しかし、なんらかの影響で肩甲骨の動きが不良となると、当然肩の動きにも影響が出ます。スムーズに動かせない状態で肩を動かし続けると、肩関節に異常をきたします。
具体的には、筋肉が圧迫されてしまったり、関節を覆っている組織が捻れてしまったり、障害されてしまいます。
よく耳にする四十肩、五十肩と呼ばれる病態がこれに当たります。四十肩、五十肩は原因が不明とされているものもありますが、ほとんどが正常な運動から逸脱した運動が続いた場合に障害されてしまい、疼痛を引き起こすとされています。
【肩甲骨をストレッチするメリットってなんだろう?】②肩こりの予防・改善
肩こりと聞くと首筋から肩にかけてを想像しますよね。その肩こりに関わるほとんどの筋肉が肩甲骨についています。
肩こりの対象となる筋肉で代表的なものに、胸鎖乳突筋、斜角筋、僧帽筋、肩甲挙筋、棘上筋、棘下筋などが挙げられます。これらの筋肉が過剰に硬くなってしまうと疼痛を誘発し、肩こりが生じてしまうのです。
筋肉は、縮むー緩むが1セットとなっています。また筋肉の縮む・緩むといった一連の流れは血流の循環を良くするのにも非常に大切な効果があります。
そんな筋肉をしっかり休ませる為には、肩甲骨をストレッチすることがおすすめです。肩甲骨をストレッチさせることで、肩甲骨についている筋肉が柔らかくなり、肩こりの予防、改善に繋がります。
【肩甲骨をストレッチするメリットってなんだろう?】③自律神経の調和
筋肉は自分が意図したように動かせますよね?「腕を曲げる」と脳が命令すると、腕を曲げられます。
では、心臓はどうでしょうか?自分で動きを早めたり、ゆっくりにしたり、調整したりすることはできません。同様に胃の動きも自分で調整することはできませんね。
しかし、走ったり、緊張したりすると心臓が早く動きますし、食べると胃も活発に働きます。このように、自分の意思で調整できない臓器に関しては、自律神経が調整してくれています。
この自律神経は交感神経と副交感神経に分けられ、現代においては持続的に緊張する場面にさらされたりすることが増えていることから、交感神経が優位に働きやすいと言われています。
交感神経が優位な状態とは“戦闘モード”の状態を想像するとイメージがしやすくなります。血圧が上がり、脈も早くなります。高血圧になりやすくなり、心臓に負担がかかり、様々な病気の引き金となり得ます。
一方、副交感神経が優位な状態とは、“リラックスしている状態”と言えます。血圧も下がり、脈も遅くなります。高血圧の人は、この副交感神経が優位になりづらくなっている状態であります。
実は、この自律神経は肩こりとも密接な関係があります。肩こりが出現すると、痛みを伴います。持続的な痛みが慢性的に続くと、自然に自律神経の交感神経が優位になってしまうのです。
自律神経が優位になってしまうと、リラックスしづらくなってしまい、肩に力が入ってしまい、すると、肩こりが増悪してしまい、負の連鎖が作られてしまいます。自律神経を調和させる為にも、肩甲骨をストレッチし、肩こりを予防・改善させることがオススメです。
肩甲骨のストレッチ方法を紹介します!
肩甲骨のストレッチ①肩甲骨グルグル回し(全体)
①手を肩につけるように肘を曲げます。
②片方ずつ肩甲骨を動かすように前方向、後ろ方向に大きく回します。
肩甲骨のストレッチ②首筋伸ばし(肩甲挙筋、僧帽筋)
①頭に手を置きます。
②耳が肩につくようにグーっと頭を倒します。反対側の手で軽く手伝ってあげると効果的に伸ばせます。
③痛気持ちいい程度のところでストップします。
④反対側も同じようにします。
肩甲骨のストレッチ③胸伸ばし(大胸筋、小胸筋)
①両手を背中で組ます。
②腰のあたりまで上げます。肘を伸ばすようにしてなるべく後ろに向かって伸ばしていきます。
肩甲骨のストレッチ④背中伸ばし(僧帽筋、広背筋)
①座位になります。
②お腹を見るようにして両手を前に伸ばします。
③伸ばすとき腕は耳につけましょう。
肩甲骨のストレッチ⑤肩甲骨合わせ(大胸筋、小胸筋、三角筋)
①座位になります。
②両肘を曲げ、両方の肩甲骨をつけるように肘を引き寄せます。
肩甲骨のストレッチ⑥肩の後ろストレッチ(僧帽筋、菱形筋、三角筋)
①座位になります。
②一方の腕を反対側に伸ばします。その肘部分をもう一方の腕で手前に引きつけます。
肩甲骨のストレッチ⑦後ろ組ストレッチ(大胸筋、小胸筋、広背筋)
①両腕を後ろで組みます。
②一方の肘を抱え、反対側に向かって引っ張ります。
肩甲骨のストレッチ⑧ツイストストレッチ(僧帽筋、菱形筋、広背筋)
①椅子に浅く腰掛けます。
②手を反対側の足の方に伸ばし体を丸めます。
③肘が太腿で固体される位のところで、体を反対側に捻ります。
肩甲骨のストレッチ⑨猫のポーズ(背中の筋全体)
①四つ這いになります。
②お臍を見るようにして背中を丸めます。
肩甲骨のストレッチ⑩猫のポーズ(胸、お腹の筋全体)
①四つ這いになります。
②お腹を突き出し、天井を見るようにして背中を反ります。
ストレッチ以外に肩甲骨をほぐす方法とは?
ストレッチ以外に肩甲骨をほぐす方法として、①チューブを使った筋トレ、②姿勢を良くする、③日常での工夫が挙げられます。
【ストレッチ以外に肩甲骨をほぐす方法とは?】①姿勢を良くする
実は姿勢を良くするだけで、結果的に肩甲骨をほぐせます。姿勢が悪くなると、肩甲骨に付着する筋が凝り固まり、更に姿勢が悪くなってしまいます。普段から姿勢を良くすることで、無駄な力が入らなくなり、筋が過剰に硬くなってしまうこともありません。姿勢良くするように意識することが、肩甲骨をストレッチさせる一番の方法と言っても良いでしょう。
【ストレッチ以外に肩甲骨をほぐす方法とは?】②日常での工夫
特にデスクワークが多い方は、一定時間同じ姿勢で過ごすことも多いことでしょう。同じ姿勢でいると同じ筋ばかり硬くなってしまいます。ですので、こまめにストレッチすることがオススメです。ストレッチするのを忘れてしまうという方は、とにかく立って、歩くことです。立つことで、血流が足にも循環し、肩甲骨周りの筋もほぐれやすくなります。50分に一度程度、立って歩くようにすることを心がけましょう。