先日、背筋に関して紹介いたしました。背筋を鍛えるためには様々なアプローチがあることがあると思います。
その中で唯一自重トレーニング(自分の体重を使って鍛えるトレーニング)で強烈な負荷を与える事ができる懸垂は、背筋だけではなく実は上半身全体を鍛えることができる、非常に優れた種目なのです。
という事で今回のテーマは「懸垂」。この記事を読んで懸垂についての理解を深め、トレーニングに組み込んでいきましょう。
- パーソナルジムAxeFit林出 匠(はやしで たくみ)出場大会:2018NPCJ名古屋大会出場・2019NPCJ大阪大会出場2016年パーソナルジムAxeFitを開業。鍼灸学士の資格を保有。また、極真空手初段と柔道初段も取得。
懸垂をするメリット
懸垂をするメリット①上半身の強化に効果的
「スクワット」はトレーニングの王様といわれています。スクワットをすれば身体全体(特に下半身)に大きな刺激を与えるため、トレーニング効果が非常に大きいからです。
対して懸垂は上半身のスクワットといわれる事があるくらい(ディップスという声もありますが、筆者は懸垂を推します)、上半身の筋肉全体を強化する事ができます。
懸垂をするメリット②トレーニングのバリエーションが豊富
同じ筋トレを繰り返していると、体っていうのは負荷に慣れていきます。人間の身体の適応力には驚かされますね。そんな時懸垂なら、一工夫加えることで、自由に負荷を与える部位を変えることができます。例えば、肩幅に広げていた手を、狭めるor広げる順手or逆手体を下げる時、ゆっくり下げる、体を持ち上げず、足を引きつけ腹筋に刺激、追い込みでただぶら下がるなど、これだけ、筋トレのパターンが増やせるんですね。1つの種目で、バリエーションを増やせるのは嬉しいです。
懸垂をするメリット③場所を選ばない
トレーニングを継続する上での阻害要素。鍛えるための「時間がない・場所がない・お金がない」そんな悩みを解決してくれるのが懸垂です。
基本的にぶら下がることができる”なにか”があれば、どこでもできます。もしも公園が近くにあり、なおかつ鉄棒やジャングルジムがあるのであれば無料でできますね。
また、もしもぶら下がるものがないのであれば、懸垂器具を購入し家で行うという手段もあります。比較的安価で購入でき、効果は絶大という高コスパなので、検討の余地はおおいにあると思われます。
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懸垂で主に鍛えられる筋肉
懸垂で鍛えられる筋肉①広背筋
広背筋は人体の筋肉の中で最も広い面積を持つ部位で、背中を覆うようにして位置しています。
働きとしては隣接している大円筋とともに肩関節の動作に大きな貢献をしており、その中でも特に腕を伸ばした状態から何かを引っ張るという動作に密接に関与しています。
この筋肉は背中のやや下部から上に向かって、翼のような形をしているので、懸垂で鍛え上げるといわゆる逆三角形のようなシルエットの体を手に入れることができます。
懸垂で鍛えられる筋肉②僧帽筋
僧帽筋も人体の中で大きな筋肉として知られています。よく肩が凝ったなんて自分で肩を揉んでいる人がいますが、そこ、僧帽筋です。僧帽筋を懸垂で発達させることで背中の厚みを作ることができます。
懸垂で補助的に鍛えられる筋肉
懸垂では大胸筋や腕の表面の筋肉である上腕二頭筋や上腕三頭筋、腹筋、肩の筋肉である三角筋後部等が鍛えられます。ただしあくまでもこちらは補助的であり、懸垂でもある程度の発達が認められますが分厚い胸板を作りたい、腕を太くしたい、バキバキの腹筋を作りたい、肩をメロンのようにしたいという場合では個別のトレーニングが必要になりますので、ご注意ください。
懸垂のやり方について
懸垂のやり方①バーの握り方
・ワイドグリップ(肩幅の1.5倍)で握る→主に広背筋上部に負荷が集中する。
・ナローグリップ(肩幅くらい)で握る→広背筋・三角筋後部・僧帽筋に効く。
・アンダーグリップで握る(手のひらが自分のほうを向く)で握る→広背筋下部・上腕二頭筋に効く。
このようにバーの握り方一つで効果が変わってきますので、鍛えたい部位にあわせてバーの幅、握り方を変えていきましょう。
懸垂のやり方②バーにぶら下がってから
- 小指側を強く握るようにしましょう。
そうすることで、肩関節を外旋(肘を内側に入れるが)しやすく背中に負荷が乗りやすくなります。親指側を強く握ると腕に負荷が乗りやすいです。 - 肩甲骨を下制(下げる)させる。
- 胸を張る。(1、2をすることで胸が張りやすくなっているはずです)
胸が張れていないと広背筋への刺激が減ってしまいますので、しっかりと胸を張るためにも小指を強く握る、肩甲骨を下制させる事を忘れずに行いましょう。
懸垂のやり方③身体を引き上げる&下げる
- バーを身体にひきつけるのではなく、肘を腰にぶつけるような意識で身体をまっすぐに引き上げる。(反動を使ったり、まっすぐな軌道でないと負荷が抜けてしまいます)
- 身体をまっすぐの軌道で下ろす。
懸垂の重量設定
基本的にベンチプレスと同じ重量設定で行ってください。
例えば80㎏の人でベンチプレスが100kg×5レップなのであれば
自重(80㎏)+加重(20㎏)の総重量100㎏で5レップを目標にできるようになりましょう。
なぜ懸垂はベンチプレスと同じ重量設定なの?
大胸筋などの前側の筋肉が強すぎると、肩が前に出る⇒猫背になる⇒肩の怪我の原因となる可能性があるためです。
デスクワークなどが多い方ですと前傾姿勢になってしまう場合が多いので背面の筋肉を鍛える事をおすすめします。
基準としては頬骨と鎖骨が垂直線上にあるかがポイントですので、横から写真をとってみるなどして確認してみましょう。ただし逆に広背筋などの背面の筋肉が強すぎるとそり腰などの原因にもなりますので気をつけましょう。
懸垂が一回もできない人へ
さてここまで、懸垂のやり方を説明してきましたが、はっきり言って懸垂は初心者では一回もできないと思います。それほど懸垂の負荷強い。
そんな人のために懸垂ができるようになるためのトレーニングを紹介します。
懸垂のトレーニング:ラッドプルダウン
ジムに行ったら必ずと言って良いほど常備されている背筋を鍛えるトレーニングマシン、ラットプルダウン。
実際にやってみると意外と背中に効かせるのが難しく、腕の力だけで引いている方も多く見受けられます。
ですがラットプルダウンは、ちょっとしたコツさえ掴めば、誰でもしっかりと効かせたい筋肉を鍛えることができます。
またマシンという特性上、重量設定なども行えるため懸垂で身体を持ち上げる事ができないような人でも背筋を鍛える事ができるため、初心者にもおすすめのトレーニングマシンです。
効果的な部位(ワイドグリップ):広背筋上部
効果的な部位(アンダーグリップ):広背筋下部・上腕二頭筋
ラットプルダウンのやり方
- バーを両手で持つ。(肩幅より広めに持ち、小指と薬指側を強く握る)
- 若干引っ張って重りを浮かせる。広背筋に負荷を感じる部分で止める。(スタートポジション)
- 肩を下げて(肩甲骨の下制)からバーを胸まで引っ張る。(順手はバーを落とす位置は鎖骨とみぞおちのあいだ、逆手は少しみぞおちよりに)
- ゆっくりスタートポジションに戻す。
ジムに通わずに懸垂のトレーニングがしたいという方へ
懸垂のトレーニング①斜め懸垂
- バーの前に立つ。
- 腕は肩幅より少し広めに開き、肘を少し曲げてバーを掴む。
- 脚を前にずらしていき、腕を伸ばして体を落とし、顔は上を向く。
- 体をまっすぐに保ち、床からの角度は20~45度とする。
- つま先を上げて、かかとは床につく。
- 胸を張り肩甲骨を下制させる。
- 広背筋を意識して体をバーに引き寄せる。
- 腕を伸ばして体を降ろす。
- 10回を1セットして、3セット行う。
懸垂のトレーニング②ジャンプ懸垂
こちらは簡単です。ジャンプ懸垂は頭より少し高い鉄棒があれば行えます。
ジャンプして鉄棒に飛びつきジャンプした勢いで懸垂するだけですね。
もちろん懸垂のやり方で説明したポイントを意識しながら行えるのが一番良いですが。
ちょうどよい高さの鉄棒を見つけるのは、至難の業ですが、良い高さの鉄棒があれば懸垂一回をクリアするのにかなりの近道になります。
というのも筋肉というのは、収縮種目よりもストレッチ種目のほうが筋肉への負荷が高いといわれているからです。
例えば力瘤を作るとき(収縮)と逆に腕を伸ばすとき(ストレッチ)であれば、腕を伸ばすときのほうが筋肉への負荷が大きいのです。
このジャンプ懸垂では身体を引き上げるよりも身体を下げるときに、しっかりとゆっくりとストレッチをかける事で広背筋の負荷を大きくすることができ、結果的に懸垂を行う力を養う事ができやすいのです。
懸垂が一回もできないという方には環境さえあればぜひおすすめしたい種目です。
懸垂のトレーニング③チューブ懸垂
フィットネス用のゴムチューブを使う事でも懸垂の練習ができます。チューブで身体を支えながら懸垂をする事ができ、またチューブが伸びた後に元に戻ろうとする力でアシストしてくれるため、楽に懸垂を行う事ができます。
さらにチューブの強度にも商品によって違いがあります。強度が高いほど、アシストする力、支える力も強いので初心者向けといえるでしょう。徐々に懸垂する力がついてきたらチューブの強度を下げていくと効率的に懸垂のトレーニングが行えるでしょう。
チューブ懸垂のやり方
- バーにチューブを引っ掛ける
- チューブに膝をくぐらせて足首の辺りでセット
- 通常の懸垂と同様に行う
懸垂をアシストするアイテムたち(高コスパ商品)
MUSCOACH チンニング 懸垂マシン
出典:Amazon
いくら鉄棒があればできるとはいえ、人目が気になる家で好きなときに懸垂がしたいという方もいますよね。そこでこちらの商品を紹介します。こちらはなんと1万円程で購入する事ができます。
筆者がこちらの商品をお勧めしたいのは、懸垂と同じく上半身(大胸筋下部、上腕三頭筋、三角筋前部)に非常に効果的なトレーニングであるディップスが行えるからです。懸垂とディップスをこなせばフリーウェイトやマシントレーニングほどではないですが、十分細マッチョといえるような身体を作る事ができます。
ただし場所もかなり取る事になるので、家のスペースも考慮に入れた上で購入を検討しましょう。
パワーグリップ トレーニンググリップ リストラップ
出典:Amazon
懸垂をしてみると分かりますが、懸垂をしていると背筋よりも先に握力なくなってしまい、懸垂ができなくなってしまう現象が起こります。そんな悩みを解決するのがこちらの商品。こちらを装着する事でグリップが効くため握力がなくなり懸垂ができなくなくなるという事がなくなります。また何といっても値段が脅威の1000円程ということで、中高生でも購入できるのではないでしょうか。
LINTELEK エクササイズバンド トレーニングチューブ
出典:Amazon
先述したとおり懸垂のトレーニングはチューブを使用する事で、効率的に懸垂を可能にする筋肉を養う事ができます。こちらの商品の優れているのは強度が異なるチューブがセットで入っており、さらに1000円以下の高コスパなところ。また懸垂以外にもチューブトレーニングができるので買わない手はないですよね。
【EN-FIT】 丈夫で使いやすい ディッピングベルト
出典:Amazon
こちらは懸垂上級者向けのアイテムです。普通の自重の懸垂では物足りないほどの上級者はこちらの商品にダンベルやバーベルなどを重りを加重する事で更なる負荷を背中に与える事ができます。またこちらは懸垂以外にもディップスでも効果を発揮するので、ホームトレーニーには必須のアイテムといえますね。
まとめ【最強の自重トレーニング!懸垂をしてかっこいい上半身を作り上げよう。懸垂をするためのアイテムとやり方について】
①懸垂をする事でのメリットは上半身の強化に効果的、トレーニングのバリエーションが豊富、場所を選ばない等がある。
②懸垂で主に鍛えられる筋肉は広背筋、僧坊筋である。補助的に上腕二頭筋や上腕三頭筋、腹筋、肩の筋肉である三角筋後部等が鍛えられる。
③懸垂の重量設定は怪我予防のため、基本的にベンチプレスと同じ重量設定で行う。
④懸垂が1回もできない人はラットプルダウン、斜め懸垂、ジャンプ懸垂、チューブ懸垂をするなどしてトレーニングすると効率的にトレーニングができる
⑤懸垂のアシストアイテムとしてパワーグリップ、ゴムチューブ、懸垂器具、ディっピングベルトがある。
以上になります。懸垂をきわめて理想とする上半身を手に入れましょう。
本記事のライター
「筋トレナースマン」
看護師歴6年目。筋トレ歴はホームトレーニー時代を含めると6年目。医療、解剖学的観点から筋トレにアプローチしていく。ボディメイクを世間に浸透させることが目標。