運動前にはストレッチを入念に!なんて学生時代にいわれた経験は誰にでもあるのではないでしょうか。その名残で今でも筋トレ前にストレッチをしている人も多いと思います。 でも本当にストレッチをすることって筋トレに対して効果的なんでしょうか。今回はストレッチをする事でのメリットとデメリットを紹介していきます。
ストレッチとは
ストレッチと聞くと一般的には静的ストレッチを想像される方が多いと思います。
静的ストレッチとは静止した状態で反動をつけずに行うストレッチ(開脚、前屈、アキレス腱伸ばしなど)の事をいいます。
力士の方が、お尻を床につけて開脚しぐいぐいと背中を押されながら股関節のストレッチをする姿を見た事があるのではないでしょうか。あれも静的ストレッチに当たります。
静的ストレッチのメリット
①関節稼働域・柔軟性の向上 日常生活で椅子に座り同じ姿勢が続いたり、運動で同じ動作が繰り返されたりすることで筋の柔軟性に偏りが出始めます。
筋は関節を通して骨に付着し、筋が収縮することで骨が動かされ腕や脚を曲げることができますが、筋の柔軟性に偏りがあると、硬い筋肉のある部分では動きが制限されるようになります。
例えば脚を開きたい(開脚したい)のに内転筋(腿の内側の筋肉)が硬くてできないという状態では、硬くなった内転筋が関節や骨を引っ張り、動きを制限しているということです。そこで静的ストレッチを行い内転筋の柔軟性を高めると、関節や骨が引っ張られることなくスムーズに開脚ができるようになります。
静的ストレッチにより身体中の筋の柔軟性が高くなれば、動きが制限されることなく、広い関節可動域を得ることができます。
②リラックス・疲労軽減効果 静的ストレッチを行う事で心拍の変動が起こり、それにより副交感神経が活発に働きます。副交感神経は身体をリラックスさせる効果があり心身の疲れを癒し、良質な睡眠にもつながります。
また、デスクワークなどをしている方は良く肩こりに悩まされる事が多いと思いますが、あれは筋肉が常に緊張状態にあり、周辺の血管を圧迫し血液循環が滞る事で疲労物質がたまりやすくなっている事から生じます。
静的ストレッチを行う事は、血液循環を促進し疲労回復の効果があります。
静的ストレッチのデメリット
①一時的な筋力低下 クロアチアのザグレブ大学研究チームによると、45秒以上の静的ストレッチにより筋力は平均5.5%、跳躍力や瞬発力も平均3%ダウンしたとのこと。またストレッチの長さが90秒以上になると、筋力は更に顕著な低下を見せたようでした。
つまりストレッチは体を柔軟にし、パフォーマンスの向上に繋がるというイメージがある実は筋肉が瞬発力を失う原因になるのです。
一説によれば、静的ストレッチは関節可動域を広げるが、同時に関節を緩めてしまうとされています。例えば重い物を持ち上げようとするときに、ひざがしっかりロックされていないと持ち上がらないように、関節の「緩さ」は筋力を使う際には障害となる可能性があるのです。
また、静的ストレッチは筋肉の緊張を取る効果はあるが、その分、脱力してしまい、パフォーマンスにつながりにくいともされているのです。
筆者も普段は筋トレ前に静的ストレッチを行いませんが、実際に股関節の静的ストレッチを行った後にバーベルスクワットを行ったところ、普段よりもレップ数、挙上重量ともに低下が見られました。
動的ストレッチとは?
動的ストレッチとは、運動前に行われるウォーミングアップとして行われることが多い、動きを伴うストレッチです。
主に腕や足を色々な方向に伸ばし、ねじり、関節を動かすことで筋肉を伸ばして、関節の可動域を広げることや筋肉を暖める事が目的です。
スポーツ選手が運動前にジョギングをしたり、サッカーでいえばブラジル体操などがこれに当たります。
筋トレの場合、例えばベンチプレスをやる時であればプレートを付けずにバーベルのシャフトのみで挙上をしたり、メインで行う重量よりもかなり軽めの重量で挙上をする事が動的ストレッチとなります。
動的ストレッチのメリット
①関節稼働域・柔軟性の向上 動的ストレッチを行う事で相反神経支配と呼ばれる働きが筋肉で行われます。
これはある筋肉(主動筋)が収縮しているとき、それに拮抗する筋肉(拮抗筋)が弛緩(ストレッチ)されるというものです。
ちなみに、拮抗筋は、主動筋と反対の働きを持つ筋肉の事です。
例えば肘を曲げていく際、主動で働く筋肉に上腕二頭筋がありますが、その場合の拮抗筋は上腕三頭筋になりますので、上腕二頭筋は収縮して、上腕三頭筋は弛緩します。
また、肘を伸ばしていく際はその逆で、上腕三頭筋が収縮して、上腕二頭筋は弛緩します。
筋トレでいえばダンベルカールで動的ストレッチをする事で上腕二頭筋と上腕三頭筋のストレッチングがなされる事になります。
しかもこちらは静的ストレッチであった脱力や関節の緩さを伴いませんので一時的に筋力が低下したりする事はありません。
そのため筋肉の柔軟性や関節稼働域を広げていきたい場合、対象となる主動筋と拮抗筋をしっかり理解したうえで動的ストレッチを行っていく必要があります。
②瞬発力・パフォーマンスの向上 動的ストレッチによる筋力の向上は様々な研究で明らかにされています。
兵庫教育大学の2013年に発表された研究でも「動的ストレッチングでは最大筋力の増加傾向がみられた。そこで、それぞれの角速度の平均値の増減率について検定を行ったところ、すべての角速度でp<0.05を示すことから、有意な差が認められた。すなわち、静的ストレッチングよりも動的ストレッチングの方が最大筋力発揮に効果的であることが認められた」とされています。
しかしなぜ動的ストレッチが運動パフォーマンスの向上に効果があるのか理由に関しては明確にはなっていません。一説によれば筋血流量や筋温といった事が関係していると予測されています。
結局いつどんなときにストレッチを行うべき?
これまでの事を踏まえて、筋トレ前には行おうとしている筋トレの重量や強度の低くした運動(動的ストレッチ)を行う事で質の高いトレーニングが期待できます。
また静的ストレッチに関しては運動後や就寝前に実施する事でリラックス効果や疲労回復効果が期待でき、次回のトレーニングに備える事が望ましいといえるでしょう。
まとめ【筋トレにおけるストレッチの必要性。行うべきストレッチとタイミングとは?】
①ストレッチは2種類に分けられ、静的ストレッチは静止した状態で反動をつけずに行うストレッチ(開脚、前屈、アキレス腱伸ばしなど)の事をいう。動的ストレッチとは、運動前に行われるウォーミングアップとして行われることが多い、動きを伴うストレッチです。
主に腕や足を色々な方向に伸ばし、ねじり、関節を動かすことで筋肉を伸ばすストレッチをさす。低重量で行う筋トレなども動的ストレッチのひとつである。
②静的ストレッチを行う事で硬くなってしまった筋肉を伸ばす事で関節稼働域、柔軟性向上が期待できる。
また副交感神経の働きを優位にさせリラックス、疲労軽減効果が期待できる。
一方で静的ストレッチは一時的な筋力低下が生じる。理由としては関節稼働域の「緩さ」や筋肉の緊張を取ることにより脱力してしまう事などが挙げられる。
③動的ストレッチでは相反神経支配が働き主動筋と拮抗筋の収縮と弛緩が行われる事で、関節稼働域、柔軟性の向上が期待できる。
また動的ストレッチには静的ストレッチであったような筋力の低下は伴わず、逆に筋力の向上が期待できる。
④それぞれのストレッチの特性を踏まえて動的ストレッチをトレーニング前に行う事でトレーニングの質を向上させ、トレーニング後や就寝前に静的ストレッチを行う事で疲労回復を促進する事が望ましい。
以上になります。
ストレッチを使いこなして充実した筋トレを行っていきましょう。
本記事のライター
「筋トレナースマン」
看護師歴6年目。
筋トレ歴はホームトレーニー時代を含めると6年目。
医療、解剖学的観点から筋トレにアプローチしていく。
ボディメイクを世間に浸透させることが目標。